【SL-2】生殖・発生毒性学の現状と課題
一般財団法人 残留農薬研究所
我々を取り巻く様々な環境因子が生体の生殖や発生に及ぼす影響を研究する生殖・発生毒性学は,発足以来60年を越える歴史の中で,日本先天異常学会が一貫して取り組んできた主要な研究テーマの一つである。我々は,様々な化合物の生殖・発生毒性を調べる過程でラットに出現した自然発生突然変異を利用して,それらの異常の起点(塩基配列の変化)から特有の表現型が形成される過程を順次解析することにより,児動物が先天的な形態異常を発症するメカニズムをより深く理解することに努めてきた。すなわち,遺伝学的な手法を用いて原因遺伝子を同定することさえできれば,器官形成期における突然変異遺伝子の発現時期や発現部位を追跡することは比較的容易であり,形態異常が誘発される過程を経時的に観察することにより,同様の形態異常を誘発する様々な化合物の標的分子や異常の発生メカニズムを推測することも可能になると考えたのである。
近年は,毒性学の分野においても,生体に取り込まれた毒性物質が悪影響を誘発する過程をより深く理解すべく,Adverse Outcome Pathway(AOP)の概念に沿った研究が進んでいる。このような研究により,毒性発現の起点となるMolecular Initiating Event(MIE)と出現した毒性兆候(Adverse Outcome)との間に起こる主要な変化(Key Events)を理解することができれば,内分泌かく乱物質の低用量影響問題の解決や甲状腺機能の低下を介した発達神経毒性の迅速な検出に貢献するばかりでなく,いずれは動物実験によらずに未知の物質の毒性を予測することも可能になるものと期待される。
本講演では,改めて生殖・発生毒性学の歴史を振り返りつつ,日本先天異常学会が取り組むべき今後の課題について議論する。
近年は,毒性学の分野においても,生体に取り込まれた毒性物質が悪影響を誘発する過程をより深く理解すべく,Adverse Outcome Pathway(AOP)の概念に沿った研究が進んでいる。このような研究により,毒性発現の起点となるMolecular Initiating Event(MIE)と出現した毒性兆候(Adverse Outcome)との間に起こる主要な変化(Key Events)を理解することができれば,内分泌かく乱物質の低用量影響問題の解決や甲状腺機能の低下を介した発達神経毒性の迅速な検出に貢献するばかりでなく,いずれは動物実験によらずに未知の物質の毒性を予測することも可能になるものと期待される。
本講演では,改めて生殖・発生毒性学の歴史を振り返りつつ,日本先天異常学会が取り組むべき今後の課題について議論する。