【S7-2】妊婦におけるβ遮断薬使用の臨床的有用性と安全性
国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター
【背景】β遮断薬もしくはαβ遮断薬は降圧薬や近年では慢性心不全治療や抗不整脈治療に頻用される。アテノロールとラベタロールは妊娠中期以降の使用により子宮内胎児発育遅延や新生児低血糖が生じる可能性があることが判明しているが、コホート研究の結果において催奇形性を認めないため、本邦の添付文書では有益性投与である。一方で同群薬であるカルベジロールとビソプロロールは、心筋症や虚血性心疾患を原因とする慢性心不全や不整脈に対してガイドラインで推奨の記載があるものの、添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」と記載されており妊婦は使用が難しい現状がある。【目的】カルベジロールとビソプロロールの妊娠中の使用に関する安全性を検討する。【方法】カルベジロールとビソプロロールと妊娠について、それぞれシステマティックレビューを行なった。【結果】カルベジロールは、検索された公表文献16報について内容を確認した。16報のうち、英語以外の文献1報、有効性に関するに関する文献1報、妊娠と無関係の文献2報、児の転帰に関する記載のない文献2報、レビュー文献4報、メタ解析文献1報を除外し、5報について詳細を検討した。ビソプロロールは、検索された公表文献27報について内容を確認した。27報のうち、英語以外の文献8報、出産後投与に関する文献1報、妊婦を除外した有効性に関する文献1報、レビュー文献4報を除外し、13報について詳細を検討した。レビューの結果、カルベジロール、ビソプロロールを含むβ遮断薬は、妊娠初期の使用により、先天異常の発生リスクを大きく増加させないと考えられた。【考察】心不全や不整脈を合併するハイリスク妊娠において、あるいは降圧剤で他の選択肢がない場合、カルベジロール、ビソプロロールを使用することによるベネフィットは潜在的なリスクに比べ大きいと思われる。