【S6-1】全ゲノムおよびトランスクリプトーム解析による疾患原因の同定
浜松医科大学医学部医学科医化学講座
タンパク質をコードするエクソン領域を網羅的にシークエンス可能なエクソーム解析によって、多くの先天異常疾患の原因となる遺伝子バリアントが同定されています。また、定期的なエクソーム解析データの見直しやエクソームデータを用いたコピー数解析を加えることで、より多くの症例で遺伝子診断が可能となります。しかしながら、単一エクソン巻き込んだ欠失や重複、トランスポゾンの挿入といったゲノム構造異常はエクソーム解析では同定は困難であり、これらのゲノム変化は全ゲノム解析によって同定することが可能です。全ゲノム解析で同定される稀なシークエンスバリアントのうち、タンパク質コード領域に位置するバリアントはわずか1%程度であり、約半分が遺伝子間の領域、約35%がイントロンに位置しています。遺伝子間に位置するバリアントに関してはその評価は困難でありますが、イントロンバリアントに関しては、最近報告されている機械学習を用いたプログラムを用いることでスプライス異常を引き起こす可能性のあるバリアントを抽出することが可能です。さらに、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行うことで、スプライス異常や発現量の異常、片アレル性の発現遺伝子を調べることが可能で、バリアントが転写産物に与える影響を直接評価可能である。本講演では、全ゲノム解析およびトランスクリプトーム解析によって原因を同定しえた例をお話しし、尿細胞(human urine-derived cells)を用いたトランスクリプトーム解析の有用性についてご紹介いたします。