【S3-1】ゲノムワイド関連解析を用いたキンギョの多様な表現型に関連する遺伝子の同定
1)ウィーン大学
2)長浜バイオ大学
2)長浜バイオ大学
キンギョは、ゼブラフィッシュと同じコイ科の硬骨魚類である。キンギョには眼球、体形、ヒレ、体色などに多様な表現型が見られる。網膜色素変性や骨形成異常などヒトの疾患と類似した表現型を持つキンギョが存在することから、キンギョがヒト疾患の病態解明や診断・治療法の確立に役立つことが期待されている。また、キンギョは、染色体数が他の硬骨魚類に比べて倍化しているため、全ゲノム重複と多様な表現型の関連性の観点からも注目されている。そこで、キンギョの多様な表現型に関連する遺伝子を同定するために、キンギョの代表的な27品種を集めて、全ゲノム配列解読を行った。そして、ゲノム上の変異情報をもとに、キンギョの各表現型に対して全ゲノム関連解析(GWAS)を行った。その結果、5つの表現型(出目、背ビレ欠損、アルビノ、尾ビレ伸長、ハート尾)と関連する遺伝子を同定した。例えば出目の表現型は、Lrp2遺伝子のナンセンス変異との関連が示された。背ビレ欠損の表現型は、Lrp2遺伝子の21番目のイントロン中の313bpの欠失及び、それに伴う遺伝子発現低下と関連があることが示された。さらにキンギョのゲノムを、トランスポゾンの染色体間の不均一な分布に基づき、LサブゲノムとSサブゲノムの2つのサブゲノムに分割した。分子進化解析とトランスクリプトーム解析により、Lサブゲノムは、Sサブゲノムに比べて遺伝子変異が少なく、全体的に高い遺伝子発現量を示すことが明らかとなった。今回の5つの表現型と以前に報告された三ツ尾の表現型のいずれにおいても、Sサブゲノムに変異または、遺伝子の欠失が認められた。このことから、キンギョのゲノムではより進化的に固定されたLサブゲノムと、より自由度の高いSサブゲノムが共存することにより、多様な遺伝子変異をゲノム中に保持することが可能であり、これがキンギョの表現型の多様性の一因である可能性が示唆された。