【S2-5】三次元デジタル情報を活用したヒト胚子・胎児の解析
京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻
ヒト胚子・胎児の解析では、1)対象個体を得にくい、2)対象個体が小さい、3)形態形成は立体的な変化を伴い複雑であるといった課題がある。20世紀初頭ころから、こういった課題克服のため1)大規模なヒト胚の収集、2) 肉眼解剖とその詳細なスケッチ、3)組織標本作成を基盤とした、連続組織切片の作成による立体化、模型作成による可視化が、解析の中心的手法として行われている。MRI等のデジタルデータは20世紀末より、ヒト胚の解析に活用され始めた。解像度の向上、コンピュータ処理技術の進歩、また組織標本等のデジタル化、とあわせ、ヒト胚子・胎児の解析は新たな研究分野の展開を示している。また、近年、臨床胎児エコーからも高解像度の立体情報が得られるようになっており、胎児標本群から得られたデジタルデータの知見との融和が期待される。状態のよい胚子・胎児標本群の利用、精巧な2次元、3次元像の取得は解析の基盤である。加えてデジタル情報の長所 1) 任意断面での観察、計測可能、2) 解析結果の表示、出力が多彩で理解しやすい、3)空間座標の取得が可能、等を利用した解析が可能である。短所として1)組織標本で得られる、細胞・組織情報での判別ができないこと、2)信号強度(密度)が近い組織間の判別が難しいこと、3)組織の物性、機能、形成機序への言及に限界があることがあげられる。こうした短所を補うために、1)組織(デジタル)像との併用、2)データから得られる空間座標値を用いた多変量解析、数理的解析、3) Tractgraphy等異なる条件での撮像画像の併用、等の工夫が必要になる。本講演では、発表者の研究室で行われた解析例を提示し、立体デジタル情報を活用したヒト胚子・胎児の解析の特長、課題について明らかにしたい。