【S2-4】造影X線 CTによる先天異常疾患モデルイメージング解析法の開発とその応用
理化学研究所 バイオリソース研究センター マウス表現型解析開発チーム
疾患モデル動物、例えばマウスモデルを用いて先天異常疾患などの形態学的表現型解析を行うには、組織切片を作製し、それを詳細に観察する手法がゴールドスタンダードである。これには、複数個体の矢状面、前頭面、横断面切片をそれぞれ作製し、詳細な比較解析を行う必要がある。さらに形態情報は3次元であり、その異常を正確に捉えるためには、欠落のない連続切片を作製、顕微鏡で観察しながら脳内で3次元へ再構築することが求められる。しかしそれを可能にするためには、豊かな経験と高度な技術が必要である。医療現場では、患部を非破壊かつ連続的に2次元画像し、それを即座に3次元再構築可能なX線コンピューター断層撮影法、所謂X線CT検査が日常的に行われている。疾患モデル動物においてもこのX線CT技術が表現型解析に使用されてきたが、その対象は骨形態や骨密度、脂肪量など極限られた表現型であった。何故ならば、それら以外の脳や腎臓、心臓、マウス胎児といった軟組織については、X線による濃度分解能が極度に不足しており、画像化が極めて困難な為である。これまでに我々は、X線CTと造影剤を組み合わせにより、先天異常疾患モデル、特にマウス胎生致死表現型イメージングに威力を発揮する高速・高精細表現型解析法を開発してきた。この手法は、非常に微細な構造、時にサブミクロンレベルで構造の識別が可能であり、また同一サンプルからの矢状面、前頭面、横断面画像などあらゆる角度の断面像再構築ができる。更にそれら2D画像から3Dイメージを作成し、その表現型の違いを容易に理解することもできる。今回の発表では、この技術が疾患モデル解析に果たす可能性、その展望について議論したい。本研究は筑波動物実験審査委員会、並びに筑波遺伝子組換え実験安全委員会の承認を受け実施した。