【S2-1】迅速組織透明化法RAPを応用した深部組織イメージング法
金沢医科大学 解剖学1
我々が開発した小型魚類とアフリカツメガエルでの迅速全身骨染色法(RAP-B)は、内臓、皮膚、筋肉を除去することなく、極めて透明度の高い骨格標本を短時間で作製することができる。RAP-Bはマウス・ラット胎児や体毛のある成獣マウスでのホールマウント骨染色標本の作製に応用できることも示してきた。RAP-Bの根幹をなす技術は透明化固定液(RAP-FIX)による迅速組織透明化法(RAP)である。 RAP-FIXは、試料の固定、脱色、透明化を同時に行い、皮膚や筋肉を除去することなく、極めて透明度の高い標本を作製することを可能にした。また、RAP-FIXは、アルカリ性溶液でありながら、長時間浸漬しても組織破壊が生じない点がこれまで骨染色に用いられてきた透明化溶液と一線を画すものである。また、透明化促進液(RAP-ENH)による処理や高屈折率マウント剤の使用により、処理時間の短縮や、透明化できる標本の大きさや種類の適用を広げることができる。RAPによる組織透明化は、組織破壊を伴わずに軟部組織を透明度の高い状態にすることができるため、透明化後の標本は共焦点レーザー顕微鏡や蛍光ズーム顕微鏡を用いた深部観察が可能である。また、透明化した小型魚類やマウス・ラット胎児のホールマウント標本、および成獣マウス・ラットの各種臓器のホールマウント標本や厚切りスライス標本に核染色剤、抗体、および種々のトレーサー等を用いた標識を施すことで、標識された構造の空間配置の描出と解析にも応用できる。標識された構造の空間配置が簡便に描出できる本法は、正常構造の把握だけでなく、形態異常や病変部における血管や神経の走行や、その他の構造・物質の局在の観察に有用な手法である。本講演では、ゼブラフィッシュ、マウス胎児、およびマウス成獣の各種臓器のホールマウント標本と厚切りスライス標本で、RAPによる組織透明化の応用例と3Dイメージングを紹介する。