【S1-4】顎顔面形成不全の症状が希少疾患の診断に果たす役割
大阪大学大学院 歯学研究科 顎顔面口腔矯正学教室
口唇口蓋裂、先天性無歯症、歯牙萌出不全を始めとした顎顔面形成不全は先天性疾患の中でも頻繁に認められる症状の一つである。また、顎顔面形成不全は希少疾患や未診断症例においても頻繁に随伴する事が知られており、様々な臓器不全と共通する分子基盤や細胞生物学的メカニズムが存在する事を強く示唆する。希少疾患はその症例数の少なさから疾患の発症メカニズムの理解や治療方法の開発等がcommon diseaseに対して遅れている事が多い。当科では未診断疾患イニシアチブ(IRUD)と協力し顎顔面形成不全を伴う未診断希少疾患の遺伝的原因の探索を進めてきた。これまでに未診断であった症例に対して全エキソーム解析による新規遺伝子変異同定により偽性副甲状腺機能低下症やBaraitser-Winter症候群等の確定診断を可能としてきた。いずれの症例においても過去に報告のない顎顔面の表現型を有しており、今後は希少疾患においても顎顔面所見の積極的な発信を行う事で未診断疾患における診断率の向上に貢献する事が可能であると考えられる。この様にして得られた遺伝子変異情報は適切なモデルを用いて機能解析を行う必要があり、当科においてもマウス、細胞株を用いた機能解析を行っている。また単一遺伝子疾患であると考えられている先天性無歯症、歯牙萌出不全については臨床の現場に応用可能な遺伝子検査アプリケーションの開発を行っている。本演題では矯正歯科臨床のチェアサイドから得られた情報をいかに基礎研究へと展開し希少疾患の診断や治療法開発に応用するのかを議論する。