【O-56】胎児期のバルプロ酸曝露は脳内炎症を基軸とした自閉症様行動異常を誘発する
近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻
抗てんかん薬であるバルプロ酸(VPA)は、妊娠中の服用により児の自閉症発症リスクを上昇させるとの報告がある。本研究では、胎児期にVPAを曝露したマウスの発達段階特異的な行動異常と遺伝子発現の異常を解析し、胎児期のVPA曝露が及ぼす高次脳機能の発達に及ぼす影響を考察する。ICRマウスの妊娠12日目にVPAを400 mg/kg体重で皮下投与し、発達期の新奇環境及びホームケージでの自発的活動量と社会的相互作用の解析を行った。また、VPAによる行動異常の要因として脳内炎症に着目し、抗炎症剤であるピオグリタゾン(Pio)を並行投与し、検出された行動異常が改善されるかを解析した。さらに大脳皮質を用いて炎症や神経伝達に関わる遺伝子の発現解析を行った。その結果、VPA群では活動量と社会的相互作用の異常が確認でき、Pio投与群ではその異常が改善された。以上のことから、胎児期のVPA曝露による自閉症様行動異常は、脳内炎症が関与する可能性が示された。