
【O-16】Poly(I:C)の胎児期曝露は大脳皮質の形態形成の異常に因る行動異常を誘発する
近畿大学 理工学部 生命科学科
近年の研究により、妊娠期に感染症に罹患すると胎児に脳内炎症が生じ、自閉症等の発達障害の発症リスクが懸念されている。そこで、妊娠期の感染症の罹患が仔の大脳皮質の形態形成や高次脳機能の発達に及ぼす影響を明らかにする。C57B6/N マウスの妊娠12日目に Poly(I:C) 20 mg/ kgを腹腔内投与することで胎児期炎症誘発モデルマウスとし、胎齢15、18日目の大脳皮質を用いて免疫組織染色を行った。また、発達期、成熟期に自発的活動量、社会的相互作用、記憶・学習、さらにストレス応答に及ぼす影響を評価するために、行動解析を行った。その結果、組織学的解析において、胎児期の神経新生に異常が見られた。行動解析において、発達期、成熟期の活動量の増加、成熟期の他者への興味の減少、ストレス応答の変化が見られた。以上のことから、Poly(I:C)の胎児期曝露は神経新生の異常に因り、発達障害様行動異常やストレス応答の変化を誘発する可能性が示された。
興味深く拝聴させて頂きました。私も以前、poly(IC)を使用し、胎児期の神経形成過程をみていました。胎生期の母体環境が、児にどのような影響を与えるかどうか、またそのメカニズムの解明は非常に重要な課題だと考えています。3点質問させて下さい。
⓵ poly(IC)を投与し母体免疫活性化が引き起こされていることを確認しているかどうか。
② 細胞数の定量についてですが、細胞数、陽性領域のカウントの方法について、標本の選択・画像取得またはカウント時の倍率、性差について分けて計測しているのかどうか。
③ 過去にも同様な系で行動解析がなされている報告があると思います。今回の得られた実験結果との整合性や新たに得られた知見はあるのかどうか。
以上、教えて頂けましたら幸いです。宜しくお願いいたします。
済生会富山病院脳外科 塚田 剛史