
【O-12】エタノール暴露による頭蓋顔面奇形と神経堤細胞の一次線毛異常
花王株式会社 安全性科学研究所
胎児性アルコール症候群(FAS)は妊娠中の母親の過飲により子供で見られる先天異常で、顔面の形態異常や精神発達遅滞がFAS患児の特徴である。FAS発症機序としてアルコール暴露による神経堤細胞(NCCs)の発生異常がマウスなどで報告されるが、マウス胚で神経堤細胞の遊走を観察することが困難なため新しいモデルが必要である。本研究ではゼブラフィッシュ胚を用いて、NCCs遊走・分化期のみに過飲を模したエタノール暴露によりFAS表現型を再現した。これらの個体ではNCCsの遊走と細胞増殖・細胞死の異常が見られた。つまり遊走・分化期において遊走中のNCCsの多くが細胞死することで頭蓋顔面奇形が生じると考えられた。さらにこの時期のNCCsで一次線毛の形成異常が見られたことから、FAS発症に一次線毛を介したシグナル経路の関与が示唆された。今後はRNA-seq解析により関連するシグナル経路を特定する予定である。