【ES-3】医薬品の開発時に催奇形性がみられた場合の対応について
武田薬品工業株式会社 リサーチ プレクリニカル&トランスレーショナルサイエンス ストラテジックオペレーション
医薬品開発において次世代への影響を評価する代表的な非臨床安全性試験として胚・胎児発生に関する試験(胚・胎児試験)がある。胚・胎児試験は通常、妊娠したラット及びウサギの胎児器官形成期に被験物質を投与し、妊娠末期に剖検することで、母動物に対する一般毒性学的及び生殖毒性学的影響を調べるとともに、胚・胎児に対する発育・形態形成・致死性への影響を評価する。上記のような胚・胎児に対する影響を臨床で確認することは基本的に不可能である。したがって、医薬品開発においては動物実験で、ヒトの胚・胎児への影響をどのように推定するかが重要となる。通常、適切な試験系及び試験デザインで胚・胎児試験が実施されていれば、胚・胎児への影響に関する追加試験は不要である。しかしながら、みられた影響をより詳細に解析することや追加の情報を得ることは、ヒトに対する外挿性や安全性をより正確に評価し、ヒトでのリスク低減や使用制限の緩和につながる可能性がある。ICH S5(R3)ガイドラインでは、リスクアセスメントの項で「回復性の有無による懸念の増大」、「母動物の二次的影響を判断するための実証」、「特定された生殖発生の影響の機序に関する詳細な知見がヒトへの外挿性につながる」といった追加情報の有用性に関する内容が言及されているものの、実際にどういったことを実施すればよいかについての具体的な記載はない。本講演では審査報告書等をベースに、医薬品開発の現場で実際に実施されている追加検討について紹介し、胚・胎児試験後の検討試験の必要性・重要性について考えたい。