【AL-1】母体免疫活性化の曝露による出生後の小胞体ストレス応答不良と炎症に対する感受性亢進の誘導
1)大同病院 小児科
2)金沢医科大学 医学部 解剖学Ⅰ
2)金沢医科大学 医学部 解剖学Ⅰ
出生前環境は出生後の様々な疾患や障害の重要な決定因子であり、感染症や自己炎症性疾患の重症例では感染などの刺激に対し過剰に免疫応答が生じることが知られている。本研究では妊娠中期にpoly(I:C)による母体免疫活性化(MIA)を誘導し,出生後の炎症刺激に対する免疫応答と臓器への影響を検討した。poly(I:C)または生理食塩水を妊娠中期に腹腔内投与した。3から4週齢の仔マウスにpoly(I:C)または生理食塩水の2回目の投与を行い、投与から2時間、24時間後に血清と組織を採取した。仔マウスのサイトカインプロファイル、各臓器の組織学的変化および小胞体ストレス応答 (UPR) について検討した。MIA曝露マウスでは,出生後の炎症刺激によって,過剰な炎症性サイトカインの誘導と急性肝細胞壊死を認めた。炎症や感染曝露時の細胞の恒常性維持に必要不可欠である小胞体ストレス関連分子の発現低下を明らかにした。刺激に対する適切なUPRは,細胞の恒常性維持に有利に働くが,過剰あるいは不十分なUPRは細胞の恒常性が維持できず,細胞死を惹起する事が報告されている。このことから,MIAにより出生後の炎症曝露時にUPRが不十分となり,免疫の過剰反応と肝細胞壊死が惹起された可能性が高い。本研究成果は,胎生期に過剰な免疫反応に暴露されることが,出生後の炎症性疾患のリスク因子形成に関与する可能性を示すものである。本研究は金沢医科大学動物実験委員会の許可を得て、行った。